呼吸している、えらい(気分変調症日記)

<

猫に永遠にぺろぺろされ続けることはできない

アパートの駐輪場(になっているスペース)にたまに友だちが遊びに来る。
名前はかれいちゃん。猫。性別は関係ない。年齢も関係ない。本名は知らない。
友だちだと思っているのは私だけかもしれないけれど友だちなんて大体そんなもんだろう。

先日、私が母のお手製おかずと情けなさが半分ずつ入った紙袋を提げて駅から帰ってきたら、裏の家との仕切りをわざわざ越えてあいさつをしに来てくれた。
おかずのにおいと情けなさと私、どれに惹かれたのかは猫のみぞ知る、だ。

前にかれいちゃんに会ったのはまだ暑い盛りの夜だった。図書館からの帰り。
初めて会ったときからめちゃくちゃよくしゃべるヤツだった。
別の友人にかれいちゃんとの出会いを報告した記憶があったので、LINEのトーク履歴を遡ってみたら8月の頭だった。
まだギリギリ仕事していたときだ。
世の中はもうすっかり秋になってしまった。
電気代にびくびくしながらエアコンをつける日々も終わった。

このひと夏は私の人生にとってどういう意味をもつ時間になったのだろう。
周りの人間から「長い人生のうちのたったの2か月。何も気にすることはない。必要な休息なのだ」
といくら言われても、心の奥からそれに納得することができない。
納得して落ち着いたほうがむしろ前に進めるとわかっているのに。

今日も現実から目を背けたくて、昼前まで何度も何度も寝直した。
挙句身体の中にスイッチひとつで爆発するBB弾大の爆弾をこれでもかと詰め込まれる夢をみた。

「涼しくなったね」とつぶやいた私の手と足をかれいちゃんが丹念に丹念に舐める。
猫の舌が痛いほどざらついていることを初めて身をもって知った。


私の安らぎはどこだ。
おわり。