呼吸している、えらい(気分変調症日記)

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東京都庁、私とワタシとときどきアタシ

「都庁」と呼ばれる建物がある。
正確には、「東京都庁舎」。
ウィキペディアによれば、1990年12月完成。
東京都庁舎 - Wikipedia

30年近く存在しているらしいが、私はテレビ画面の向こう側にしか、それを見たことがなかった。

別に何かきっかけがあった訳ではないのだが、たまたま、今日初めて、真下から、その建物を見上げた。

言葉が出ないくらい、惹きつけられてしまった。

建築にも美術にも詳しくないから、その迫力の源を冷静に分析することができない。

例えば、超高層マンションとか、ガラスをふんだんに使った高層オフィスビルとかを同じように見上げても、同じ圧は感じないだろうと思う。
聳え立つ、とはこういうことを言うのか。
石造りの重厚感のせいか。正八角形をモチーフにしたという直線的なデザインのせいか。
オレンジ色のライトアップがされていたが、それは関係ない気がする。
とにかく、見上げれば見上げるほど、見つめれば見つめるほど、まるでここが現実ではないような、誰かに完全に作られた世界に自分が人形として置かれているような、そういう感覚に陥った。

都庁付近は中央公園も含め完全に「整備」された街並みになっている。
その圧倒的な「人工感」が気持ちよかった。
「圧しつぶされる」という恐怖に勝る、「人間がこれを作ったのだ」という優越感。
多くの建物は、それを得るために作られるのかもしれない。

少しすると雨が降り始めて、ペトリコールがたちこめた。
都庁を照らす明かりで、雨粒も可視化される。
雨粒も作り物のように感じてしまう。

まっすぐ並ぶビル、まっすぐ通る道路、まっすぐ立つ街灯、街路樹、そして雨。
管理された街並みに訪れる夜の中にいることは、氷を飲むみたいに気持ちよかった。

いつか地球全てが「管理」されたとき、その夜の中で私は同じことを思うだろうか。