呼吸している、えらい(気分変調症日記)

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サンタはコンビニで何を買うか

やっぱりレジ横の肉まんだろうか。
寒空の中をそりで飛ばしてきた後だ、絶対に身体に染みる味がする。


街がクリスマス色になってきた。
もうクリスマスの時期か、ということには、だいたい毎年駅前や大型スーパーのぼんやりしたイルミネーションで気づく。
今年も、出先で西〇〇駅前の広場が光っているのを見て、ああそうかと思った。
余談だが、スーパーのイルミネーションで季節を感じられる私には、有名スポットは明るすぎる。あまりにも眩しい。

今日、帰宅途中に地元の駅で、ぼんやり目覚まし時計を探していた私の目に、突然とあるメッセージが飛び込んできた。

°˖✧°˖✧°˖✧SANTA STOP HERE✧˖°✧˖°✧˖°

英語に全く自信が無いので今改めて訳を確認したが、「サンタさんうちに来て!」というメッセージらしい。
ぱっと私の頭に浮かんだ意味は「サンタ!!!!ここで止まれ!!!!」もしくは「サンタはここに止まる!!!!」という強火すぎるサンタへのアピールだったので、なるほど調べて正解だった。
緑と赤でデザインされた矢印に、その文が白抜きでデザインされたその装飾は、青と緑の光に照らされてエキナカのファミマ店内を指していた。

サンタはコンビニに寄るのか。
しかもエキナカの。
今冷静に考えれば、サンタはコンビニに客として来ることを望まれているのではなく、プレゼントを届けに来ることを望まれているのだとわかる。しかしそのメッセージを受信したとき私は疲れていて、冷静ではなかった。
(というか、夜な夜なコンビニにものを届けに来る人……そうか、たまに見かけるトラックから大きな荷物をコンビニへ運び入れているあの人たちはサンタという可能性も……みたいな純粋な心は残念ながらもう私にはない。サンタであろうがなかろうが、本当にいつもありがとうございます)
冷静でなかったので、なるほど、サンタもコンビニに寄るのかも知れない、このコンビニはサンタ歓迎なのだな、と思った。

そこで私は考える。

冬の深夜のそり飛行は、真冬に薄着でツーリングをするより厳しいのではないだろうか(バイクは持っていないけれど)。
どう考えても、冬の夜の上空を、顔周りの防備がひげと帽子だけという状態で飛び回るのは、かなり身体が冷える。
屋根がついているそりに乗っているサンタは見たことがないし、顔がすべて隠れるタイプのヘルメットをかぶったサンタと言うのも聞いたことがない。
顔面は絶対にガビガビだし、鼻水も出ているし、耳は痛い。
そこへ日本のコンビニだ。何でもある。特に冬の夜のコンビニほど心強いものはない。
しかも、たぶんクリスマスの深夜ならそりが一台停まっていても誰も気にしない。
田舎のコンビニの駐車場はめちゃくちゃ広いし、店内も外もそもそも人がいない。
都会のコンビニはクリスマスの深夜なんて酔った若者しかいないのでどうとでもごまかせる。その恰好もひげもすべて、「コスプレ」として、勝手に納得してくれるだろう。

そんな仕事中のサンタにとってオアシスのような日本のコンビニで、サンタは何を買うのだろう。

ポケットティッシュとホッカイロをまずかごに入れて、その後トナカイ用のサラダを買って、最後にホットコーヒーを一杯注文して、イートインコーナーは使わずにトナカイとともに休憩をする、という、丁寧な暮らしぶりを発揮するサンタ。
店内巡回中にたまたま「あったかストッキング」なるものを見つけてしまい、パッケージの脚から自分が履くことではないことを感じつつも、「まあくつしたとワシは切っても切れない関係だし!」と自分に言い聞かせながら3個買ってみるサンタ。
ホットスナックを「ホッホッホ」と言いながら爆買いするサンタ。
毎年ここで温かいペットボトルの日本茶を飲み比べするのを楽しみにしているサンタ。

そしてやっぱりレジ横の肉まんだろうか。
寒空の中をそりで飛ばしてきた後だ、絶対に身体に染みる味がする。

ここまで好き勝手に書いたお詫びに、これを読んでいるかもしれないサンタさんに一つ。
エキナカのコンビニは、終電と共に閉まります。
車庫にそりを紛れ込ませられる利点はありますが、くれぐれも営業時間はお気を付けくださいますよう。